NEXT HORIZON・Shu Land Annexフォトギャラリーブログ・オダギ秀の眼差しとモノローグ。

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川面。 06:08



岸辺の石段に腰を下ろし、さっきから川面を眺めている。
ゆらゆら微かな揺らぎは、時折、川舟が乱すほかは、大きな変化を見せることはない。
自分がいるようないないような時の流れを、ちょっと止めるように、どこからか電車の通る音。今ごろ、と、ふとキミを思う。
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港の残骸。 05:50



雨の残る港の隅で、時を感じさせる残骸など見ると、ふっと、イノック・アーデンの物語がすぐそこにあるような、あるいはボク自身もイノックであるかのような錯覚に陥る。
この哀しい恋物語を、ボクは若い日、あることで尋ね当てた老人から教えられた。
衰弱した彼が顔を急に明るませ、しぼるような声で言った言葉が忘れられない。
「わたしは、自分がイノックであるような気がするんですよ」
誰にでも、人生に携える物語があるものだ。
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この窓から。 06:43



そこに窓があったことさえ、思い出す人はないのだろうか。
港の隅の、置き去りにされた古い船。
この窓から、何を見たのですか。この窓から、誰が見たのですか。この窓に、何を想ったのですか。
窓なんて、なければよかったのかも知れない。
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煉瓦塀。 04:20



そこにどんな建物があったのか、もう忘れてしまった。空き地に、煉瓦塀だけが少し残っている。
空き地は、建物がなくなってしばらくは、貸し駐車場になっていた。片足を引きずるように歩く管理人がいたが、消息が途絶えて随分な年月が過ぎた。
思い出に拭い切れない痕跡を重ねるように、煉瓦塀は、ひっそりと佇む。
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振り返る夏。 06:12



何もない空を見上げた。夏らしい空ではないことに、何故か安堵した。
季節は、穏やかに過ぎるのがいい。
いつの間にか移ろって、ちょっと疲れを感じたりするのも、それはそれでいいと思う。
夏という季節は、そんなものなのだ。振り返って、やっと感じるくらいの方が、今のボクには相応しい。
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海に沿って。 06:34



いつだったか、海に沿ったこの道を、車で走った。
車一台がやっと通れるようなこの道は、途中でUターンなど出来そうにないように見えたから、もし、行き止まったらどうしようと心配しながら、抜けられることを祈って走った。
その頃ボクは、rainyというシリーズを撮っていて、雨が降ると撮影に出かけていた。
その日も小雨で、先が霞んだこの道は、果てしがない道のように見え、その道を進めば、幻想的な、いい写真が撮れる気がしたのだ。
不安を抱えながらひた走り、先の霞の中に入ってみた。するとそこには、幻想的どころか、海の家が何軒も立ち並ぶ、ポピュラーな世界があった。
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杭。 05:58



杭を、さっきから、何となく眺めてしまっている。
どうでもよさそうな細いワイヤーやヒモを、ずっと支えてきたと言いたげな杭。
そうだよ、それでいいじゃないか、意味のない人生なんてないさ。
今日の風は、少し爽やかだね。
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波を待つ。 08:35



日射しは強くなってきたが、梅雨はまだ明けない。
夏という季節は、これから向かうと言うのに、懐かしさと切なさが交錯して、遠い日に戻っていくような気がする。
そんな歳なのだと思いながら、ひとり、ちょっと苦笑う。
大きな波を待つ彼らに、小さな波は見えているのだろうか。
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浜の旗。 05:32



ブッシュを抜け砂浜に出ると小さな小屋があり、傍らの竿の先に、千切れたようなフラッグが風を受けていた。
太平洋に、自分一人で立ち向かっているような可愛らしさに、手を振って励ましたくなった。
梅雨入り近い風は、まだ冷たい。
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鈴。 04:42



渓流を登った山間に、その神社はあった。
新緑に包まれた本殿の向拝を見上げると、猛々しい飾りが据えられていたが、むしろその雰囲気は華やかで、初夏の空気の爽やかさを感じさせた。
ボクの後ろから石段を登ってきたカップルが、楽しそうに鈴を鳴らす。
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遙かな空。 04:49



もしも、この瞬間に眼を閉じていたなら、
もしも、この瞬間にカメラを持てなかったら、
もしも、この瞬間にキミを思わなかったら、
ボクは、何をどう表現できただろうか。
  ♪「泣いてるようなヴィオラの音
    遙かな空に想い馳せる」
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マスト越しに。 04:37



マスト越しに、ぼんやりと出入りの船を眺めている。
港の賑わいは、過ぎたようだ。
こんなふうに、あの日も海を見た。
何も、変わってはいないような気がするのに。
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いつもの席。 03:48



いつもの席、と言っても、いつも空いているワケではないのだが、空いていれば必ず座る、カウンターの一番隅の席。
いつものカップで、いつものマタリを飲む。いつもの明かり。
同じ写真集を開けば、またこの間の続きの時間が流れ始める。
つらいことなんて、なかったさ。
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茶の里の樹。 05:18



奥久慈も、もう初夏の色。新芽を吹き出した茶畑の中に、一本の樹。
つい惹かれるのは、何故だろうか。
同じような色合いなのに周りには溶け込めず、ちょっと場違いなぎこちなさが、共感するのかも知れない。
時折、思い出したように鳥の声。
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梨の花。 06:43



梨の花が咲いている。
梨農家では、花の盛りの十日ほどの間に、必死で受粉作業をしなければならない。
タンポポの綿毛のようなタンポに花粉を付け、一輪ずつ授粉させていくのだ。
五月に入ると小さな実が膨らみ始め、八月には、ずっしりとした梨が、たわわに実る。
ふと、高校時代に熱心に読んだ、中野重治の「梨の花」を思い出したが、すぐそれは、小説の内容ではなく、その小説を読んでいた時代の思い出に替わってしまった。木造の校舎、木立の下の微笑み。
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